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貴女との輝かしき夜(シャイネンナハト)
貴女との輝かしき夜(シャイネンナハト)
イラストSS
深緑の騒動を経て、それでも『楽しむこと』を忘れてはならないとリュミエは考えていた。
ファルカウの集落でも街を輝く光に包むことがある。民が喜んでいるならばそれで良い――と考えていたリュミエに「一緒に見に行こう」とクロバは誘った。
クロバは普段からローブ姿である彼女にはコートを勧めた。勿論、そうしたものを必要としてくる機会が少なかったリュミエの衣服調達にはアンテローゼ大聖堂の支援もあったが。
「似合いますでしょうか」
「……あ、ああ。良く似合ってる」
頷いてクロバは瞬いた。リュミエからすればクロバは良き隣人だ。森を愛してくれる素晴らしい友人でもある。
クロバからすれば指導者であるリュミエは大魔道士と云う事もあり敬愛を抱いていた。だが、それ以上に一人の女性としても魅力的だとも感じている――魅力的だ、というのは当たり前だという理性が妙な邪魔をして居るのは仕方が無いのだ。相手は『あの』ファルカウの巫女であるのだから。
「誘っていただけ嬉しいです。一人ではこの様に見る機会はありませんでしたから」
「よかった。リュミエ、転ばないように」
「ええ。お気遣いに感謝を。……あちらに言ってみましょう。泉が光を反射し、とても美しいでしょうから」
歩いて行く彼女の背中を見詰めてから名前の付かない淡い感情が揺れる。クロバは自覚のないその淡さに違和感を覚えながら白い息を吐いた。
SS担当:夏あかね