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イラスト詳細

板谷 辰太郎のみっくによるおまけイラスト

作者 みっく
人物 板谷 辰太郎
イラスト種別 おまけイラスト(→元発注イラスト
納品日 2022年12月24日

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イラストSS

●かつての憧憬は遠く
 クリスマスのイルミネーションが、街のあちこちを彩っている。カシュ、と、板谷がチューハイの缶のふたを開ける音が響いた。
「それ、一杯目ではないですね?」
「まあな」
 神前にかまわず板谷は缶をあおる。
 顔には出ないが、板谷はすでにほろ酔いだ。酒で温まった体温を、冷たい少しの風が運び去っていく。生地の薄いトレンチコートに、雪が降っては積もらずにとけていく。
 神前にしても、咎めているわけではなかった。パーカーを目深にかぶり、ただ、焼き鳥の串をほおばる。
 クリスマス・ソングが町に響いている。
 シャンパンでもない。チキンでもない。どこか、社会にはなじめないはぐれもの同士の、奇妙な連帯がそこにはあった。
 心が通じ合ったかに錯覚する、――そんなときもあった。

 再現性東京は、あの時の景色によく似ていた。
 技術によって再現された天球の下で、あの日と同じように二人は座っていた。背中越し、手を伸ばせば届く距離であろうに、互いにその溝が埋まることはなかった。
「あなたは変わりませんね」
「……キミは変わっちまったねぇ」
 同類だと思っていた神前の姿は、どこか遠く思えた。
 シャイネン・ナハトであるがゆえに、ただ、ひととき、今は、穏やかである。

 ※SS担当者:布川

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