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水月・鏡禍の西瓜の布団によるシングルピンナップクリスマス2022
水月・鏡禍の西瓜の布団によるシングルピンナップクリスマス2022
イラストSS
黙々とかぎ針を動かして編み続ける。その針の動かし方はまだ拙い。それもそうだ、何せまだ編み方を習い始めたばかり。目の大きさがバラバラで歪になってしまうのもまぁ仕方のないことだろう。
それでも彼は色々と仕入れてきた緑色の毛糸玉で編み続ける。
緑のマフラーが一本。黄緑のマフラーが一本。深緑のマフラーが一本。
出来上がってはあちこちに投げられていく。
「ふぅ……なかなか難しいですね」
息を吐いて天井を見上げる。さすがに編み続けていては集中力も切れるし目だって痛くなってくる。
この辺りで一度休憩にしようか? そんな思いだって浮かんでくる。
少しだけ目を休めよう。そう考えて目を閉じ、暗くなった視界にぼんやりと浮かぶのはマフラーを贈りたい恋人のこと。マフラーを贈られて喜んでくれるだろう彼女の笑顔を想像すれば頬に熱が集まるもので。
「よし、頑張ろう」
休憩なんかしている余裕はなかった。今は少しでも多く数を重ねて編み物を上手くならなくては。
自分が作った完璧で納得のいくマフラーを彼女に身に着けていてほしい。それで寒さを感じず温まってほしい。そしていつまでも自分のそばで笑っていてほしい。
そう願いながら練習を続ける鏡禍の顔には笑みが浮かんでいたのであった。
※SS担当者:心音マリ