イラスト詳細
グドルフ・ボイデルの萬吉によるおまけイラスト
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誰が呼んだか三賊同盟。
奇跡の夜に彼らは何度も死にかけた。
美味いご馳走もない、ふかふかの寝床もない、まばゆいイルミネーションもない死地で、しぶとくたくましく彼らは生き残っていた。
ドオォォン!
監獄島に轟音が鳴り響く。オクトの放ったダイナマイトの爆発音が風雲急を告げた。オクトが自分のそばに放り投げたのだからオクトもタダではすまない。ボロボロになりながらも一番気になることと言えば、
「キドーてめぇ! 何抜けがけしやがってんだ!」
ぎゃあっと悲鳴をあげたゴブリンがオクトの大きな手に捕まりそうになる。キドーの服がビリビリと破けたがそれどころではない。
「俺は先行して脱出路を探そうとしただけよ!」
「嘘こけ!」
「こっちにも喰らったじゃねえか! ちったあ投げる場所考えろ!」
グドルフも抗議の声をあげる。グドルフは監督官に大岩を投げたばかりなので力んで赤ら顔だ。
「いたぞ! あっちだ!」
あれだけ大きな爆発音がしたのだ。追手が来てもおかしくない。
「ずらかるぞ!」
三人の誰ともなく声を張り上げ、ぱあっと散る。
三人の脚はそんなに速くなかった。巨漢二人とチビの短足一人なのだ。
道中、ツルハシなど作業道具の詰まったたるを横倒しにして進路を妨害したり、グドルフがあえて引き返して追手を殴り倒したり、オクトの脚についた鉄球ははずれなかったのでブン回して武器にしたり、身軽なキドーが高所に隠れて奇襲をかけたり。
なんやかんやあって。
「外だー!」
はしゃぐキドー。かろうじて股間を服だったもので隠しているが尻が隠せていない。
「おいおい何ガキみてぇにはしゃいでんだよ」
そういうグドルフのズボンは尻が破けてパンツが見えている。
「久しぶりのシャバの空気だ」
オクトにいたってはサンタ帽以外は身につけておらず全裸だ。
どうでもよさそうに黒猫がそばでうーんと伸びをしている。
「おい見ろよ! キドー」
「朝焼けが目に染みるぜ!」
「美しい、な」
実際のシャイネンナハトはとっくに過ぎていたが、シャイネンナハトは俺たちの心にあったのだ。
輝かんばかりのこの夜に。グドルフ! キドー! オクト! 終わったよ……。
と、感動的な気持ちになっている彼らだったが今自分たちがどこの場所にいるのかもわからない。周囲は海。監獄島だけに脱出が難しい海流。着る物も食べる物もないときた。
三賊たちの冒険は続く……。
※SS担当者:7号