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シャイネンナハト2022おまけ(茶月こまIL)

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 混沌のどこぞにある、喫茶店のような、図書館のような施設。天井まで伸びる書架と、所狭しと並んだ書籍は圧巻で、紙の独特な匂いが満ちている――普段であれば、だが。
 本を読み、喫茶のように飲食を楽しめるこの場所は、今宵ばかりは喫茶店とも、図書館とも違う様相を呈していた。
「ふふ、おいしいですね〜」
 すっかり酔って楽しげな柊木 涼花(p3p010038)がグラスを揺らす。……おかしいな、まだグラスにはカクテルが半分以上残っているし、これが1杯目のはずなのだが。
 そんな涼花の視線は、ほぼ酔い潰れてべろべろなムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)――の抱えた酒瓶で留まる。
 あんなに酔っている今なら、酒瓶をとってもバレないのでは?
 涼花の手がそぅっと酒瓶に伸びる。ムエンが気付いた様子は、ない。
 しかも時をほぼ同じくして綾辻・愛奈(p3p010320)がムエンにサンタ帽を被せようと背後から迫っている。これにもムエンが気付いた様子は――ない。
「あら」
 そんな様子にマリエッタ・エーレイン(p3p010534)はくすりと笑みを浮かべて、しかし止めるつもりはない。危ないことさえなければこれも楽しい思い出のひとつだ。
 それに――あちらもあちらで楽しいことになっている。
「はい、あーん、です♪」
「ゆ、ユーフォニーさん!?」
 キョドるムサシ・セルブライト(p3p010126)の口元にケーキが近づけられる。なんだか異様に楽しげなユーフォニー(p3p010323)の手によって。
「あの、こ、これは……」
「あーん、ですよ? 美味しいので食べてください♪」
 美味しいだろうとは思う。しかしこの状況、美味しい以上に何も味がわからないだろうことが容易に想像できる!!
 アワアワと狼狽えるムサシだが、残念ながら食べざるを得ないだろう。酒で酔ったユーフォニーが引く様子はない。
(全く、賑やかなモンだ)
 窓際に腰掛け、グラスに口をつけるバクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)は酔いの回った女性陣に小さく肩をすくめる。
 この程度の酒では酔わないが、この楽しげな雰囲気には少し酔ってしまうかもしれない。賑やかな夜もまた悪くないものだ。
「お前さんも混ざらなくていいのか?」
「っ!」
 視線を流してそう問えば、セレナ・夜月(p3p010688)がはっと分厚い本から顔を上げる。
 せっかくのパーティなのに、すっかり本に引き寄せられてしまった。いいや、これはふと向けた視線の先で気になる魔導書があったから。これらの類は時として何よりも強い誘惑を放つのだ。
 しかしパーティに誘われたのだから、パーティを楽しむべきか。魔導書から視線を外したセレナの視界にまた別の本が入る。思わずジュースを取りに行こうとした足が止まった。
(こ、こんなにも本が積んであると……)
 そう、書架に並んだ本ばかりではない。パーティのためにいくらか片付けられたものの、書架に収まりきらなかった本はたんとある。
 視界の端でバクルドが小さく苦笑しているが、これは仕方ない。仕方ないことなのだ!
 むむむと葛藤するセレナの耳に「あっ」と上がった声が届く。
「貴方、まだ未成年でしょう」
 注意するチェレンチィ(p3p008318)の前では、アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)が何とも言えない表情で立っている。よくよく見れば、その視線はチェレンチィの抱えた未開封の一升瓶に向けられていた。
「持っていただけだろ?」
「代わりにこちらを持っておいてください。いらぬ誤解を受けますよ?」
 渡されたのはジュースの入ったグラス。いや、これが正しいのである。アルヴァがいかに優れたイレギュラーズであれど、公的には酒を飲めない年齢だから。
(いけると思ったのに……)
 実はどさくさに紛れてちょっと飲もうとしていた、なんて。いやだっていけると思うじゃん? これだけ皆がべろんべろんに酔っぱらって騒いでいれば。
 だがしかし、決して広くはない空間にこれだけの人数がやいのやいのと騒いでいれば、逆にコソコソしている姿はわかりやすかったかもしれない。加えて、チェレンチィというしっかり者が見ていたのだから。
 ……だがしかし。チェレンチィだってパーティに来たからには楽しみたい。
(後で少しいただこうかな)
 アルヴァから没収した一升瓶を見下ろし、そう心の中で呟く。全部飲んで、万が一彼女たちの仲間入りをしたら明日絶対落ち込むので、ほんの少しだけ――。
  その『彼女たち』はと言えば。
「はい、次ですよ。あーん♪」
「ユーフォニーさん、自分はもう満足――」
「食べてもらえないんですか……?」
「ウッ」
 たべます、と顔を真っ赤にしたムサシが呟けば、ユーフォニーがふわりと笑う。その傍らでは相変わらずセレナが魔導書の誘惑と戦っているし、ムエンはサンタ帽だけでなく付け髭までつけられていた。ちなみに涼花に酒瓶はとられていて、涼花は楽し気にムエンの頬をつついている。さて、ムエンが諸々に気づくのはいつになることやら。
 時読み書庫喫茶のシャイネンナハトは、酔った者たちが眠気に負けてしまうまで、それはもう賑やかなものであったとさ。

 ※SS担当者:愁

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