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恋屍・愛無の湯葉まるによる2人ピンナップクリスマス2022
恋屍・愛無の湯葉まるによる2人ピンナップクリスマス2022
イラストSS
光り輝く街並みを見下ろして、観覧車のゴンドラに揺られている。
まるで世界から隔絶された空間のようだと愛無は感じていた。何時ものような涼やかな笑みを浮かべる水夜子は掌をぺたりとゴンドラの窓へと押し当てて目を細める。
「美しいものですね。普段は見上げる街並みを、こうして見下ろしながらの空中散歩とは又とない機会です」
「水夜子君が喜ぶのは意外だったかも知れないな」
「あら。その心は?」
水夜子がくすりと笑えば愛無は「『人の営みを感じる』と言い出しそうだったからだ」と応じた。
確かに、光の一つ一つは人間の営みそのもの。オフィス街など、この時間まで残業をして居るのだと憂いをも感じるほどではある――が、それは兎も角といった調子なのだ。
「まあ、クリスマスですから」
「クリスマスはなんぞせんちめんたるになるのかな」
「ええ、せんちめんたるでないーぶな乙女になるものですよ」
軽口を交える水夜子はふと、一点を見下ろしてから「あの辺りが希望ヶ浜学園でしょう」ととんとんと窓を指さし叩いた。
「成程。こうやって見れば再現性東京も広く感じるものだな」
「けれど、海も張りぼてで空も張りぼてで。偽りばかりではありますが、私達にとっては此れも現実なのでしょうね」
何処までが現で本物であるかは定かでないけれど。
此処で生きていることまでは、嘘ではないのだと。その横顔を見詰めて改めて感じ入った。
*SS担当:夏あかね