イラストSS

「よーし。ビールは揃った様っすね？」
「勿論っす。シャイネンナハトなんて、くそくらえっすよー！」
「よーくいったっす！　それじゃー、乾杯ー！！」
　威勢良く、ビールマグがガタン、と音を立てて奏でられる。
　シャイネンナハトの夜、恋人達が愛を紡ぎ合う日。
　……でもここは、ガヤガヤと酒飲みの声が響きわたり、おおよそデートにそぐわない酒場である。
　そこにレッド・ミハリル・アストルフォーンと、ウルズ・ウィムフォクシーの……最近失恋組二人。
　新しい恋人などいない。今隣に居る、仲間と共に呑む事が今日の全て！
　一杯、二杯、三杯……次々と黄金色の泡が喉に吸い込まれていき、ドンドン酔いも回ってくる。
　三杯目を飲み干した頃には、机に軽く突っ伏してしまうウルズ。
　ゴクゴクと隣で呑むレッドの勢いは止まる事無く、彼女の口からは……最近別れた恋人との話が湯水のように零れてくる。
「ちきしょー！！　もっと酒、持ってこーーい！！」
　愚痴る彼女の目尻には……涙が一筋。
　そして、そんな彼女の言葉にウルズも。
「おー……もっと持ってこーいっす。もう、なにも考えたくねーっすからねー」
　許容量で言えば最早限界ではあるのだが、もう今日は呑んでも飲み足りない。
　シャイネンナハトの夜、他者の幸せに僅かな羨ましさを覚えつつ愚痴り合い、日付が変わるまで二人は酒場で杯を酌み交わし続けた。

　※SS担当者：緋月燕