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ヴェルグリーズのたぢまよしかづによるおまけイラスト
ヴェルグリーズのたぢまよしかづによるおまけイラスト
イラストSS
シャイネンナハトの夜は冷える。
特に今年はいつもよりも寒さが厳しくて、吸ったときの空気が喉に冷たく突き刺さるのがよく分かる。
吐いた息が真っ白になるのは、もうこの季節の定番だ。
頑張って手を擦り合わせて温めようとしても、この寒い空気の中では一瞬で熱は逃げてしまう。
かと言って手袋は忘れてきたし、ポケットに手を突っ込むのもちょっと……。
我慢して冷たいままで帰らなきゃかな、と思っていたら。
突如右手が優しい熱に包み込まれた。
「大丈夫? 指先まで真っ赤になってるみたいだけど、痛くない?」
優しそうな瞳で手を握りしめてくれた、不思議な人。
彼の両手に包まれた右手はほのかな熱と共に、じわじわと感覚を取り戻していく。
痛くないかと聞かれて思わず大丈夫だと横に振ったけれど、本当は少し痛い。
でも彼が手を握って温めてくれているおかげか、その痛みさえ何処かへ消えてしまった。
「さ、今度は左手も。今日はとても寒いからね、もう少しこうしていよう」
温かい彼の手が、左手の感覚も取り戻していく。
冷たくて血流が滞った氷の手が、少しずつ融解していくのがよくわかった。
――ヴェルグリーズ、シャイネンナハトの夜に見知らぬ女性の手を助ける。
※SS担当者:御影イズミ