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・・・・・・・・・こんな幸せなことあっていいのでしょうか…????
・・・・・・・・・こんな幸せなことあっていいのでしょうか…????
イラストSS
雪降る豊穣郷で妙見子は緊張しながら待っていた。
借りてきた猫――ならぬ借りてきた狐のような顔をして妙見子は視線を右往左往としている。
彼と出会ったのは一度きりだ。豊穣郷に訪れて、その時の案内人として中務卿である彼がやってきたのだ。
あの時一目見たときに強烈な想いが胸を支配した。焼き焦がれるほどの衝撃と、仄かで温かな気持ちが沸き上がったのだ。
妙見子自身は元の性質によって英雄の素質がある人物に惹かれるのだが――
(これは、どうしたことでしょう……)
己の抱くその感情に名前を付けることが出来ないまま、妙見子は一人待っていた。
豊穣の景色は故郷に似ていた。懐かしさ故に彼に街を案内して欲しいと申し入れたのだ。
(少し大胆だったでしょうか)
頬を赤らめて首をふるふると振った。初対面の男性にこの輝かんばかりの日に案内を求めたのだ。
ああ、もしも断られてしまったら? 悪印象を与えたら?
緊張ばかりを抱いている妙見子は普段の明るさを感じさせなかった。
爆発する語彙でアタックしてしまえば彼は困り切ってしまうのではないだろうか。
鎮めなければ、己を。そう。律するのだ。落ち着いて、妙見子――妙見子――!
「妙見子殿――だったか?」
降った声の穏やかさに妙見子は緊張を滲ませながら顔を上げた。
*SS担当:夏あかね