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クリスマスマーケットにて
クリスマスマーケットにて
イラストSS
「ナヴァン様! あっちにもおいしそうなものがありますよ!」
こっちこっちと呼ぶニルに引き摺られるようにナヴァンはやってきた。
クリスマスマーケットに似合わない男だとナヴァンは自負している。ニルが行きたいと瞳を輝かしていた事も、同僚が「せっかくやし行ってき」と外に出ることを強制してきたことも、色々と偶然が重なっただけだと感じている。
けれど――嬉しそうにマフラーに埋もれながら走るニルを見ると満更でもない気持ちになるのだ。
「ナヴァン様、『おいしい』ですか?」
「ああ、悪くはないな」
マグカップにはグリューワインが注がれている。お土産にマグを貰えると聞いたときにニルが見せた微笑みをナヴァンは見逃さなかった。
飲み終わったら持ち帰って洗い、研究所でニル専用マグにしようと考えたのだ。
「可愛いですね、マグカップ」
「ああ」
「ナヴァン様はそれでコーヒー、飲みますか?」
――いや、自分で使うべきか。ナヴァンは眉を少しばかり吊り上げたが「どうしようかな」とだけぼやいたのだった。
「それよりニル、もっと色々探そうか」
「ナヴァン様は食べたい『おいしい』ものはありますか?」
「ヴルストを探そう」
そう言ってから走って行くニルを一瞥して「逸れる」とナヴァンは肩を竦めて手を差し出したのであった。
*SS担当:夏あかね