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澄恋のうみちょすによる2人ピンナップクリスマス2022
澄恋のうみちょすによる2人ピンナップクリスマス2022
イラストSS
世間は聖夜に灯された蝋燭の炎に想いを馳せ、鐘の音に耳を澄ませているというのに、松元診療所は無機質な蛍光灯に包帯を解く音だけが響いていた。
包帯の下から現れた左目は生々しい傷が残っており、眼球は濁ってしまっている。
一向によくならない彼女の左目に聖霊は眉根を寄せた。痛むかと聞けば澄恋は首を横に振る。
痛みは感じている癖に、彼女は春の野に咲いた菫の花の様に美しい笑みで突き放すのだ。
『痛みには慣れていますから』
(慣れていいわけねぇだろ)
聖霊の把握しているだけでも澄恋は三回大怪我をした。
一度目は優しく全てを抱きしめる腕。
二度目は愛する人を映す為の左目。
三度目は聖霊の知らないところで、澄恋が大事にしていた長い髪。
どれも聖霊には護ってやれなかった。
尤も、澄恋は聖霊を責めることはしなかった。彼女は強い女性だった。すまなかったと謝る聖霊に澄恋は、また微笑んで言葉を紡ぐのだ。
「大丈夫」
聖霊様が、治してくださるでしょう?
白無垢の様に穢れなき言葉で『医神になりたがっているだけの只の医者』を縛り付けるのだ。
(だからどうか、どうかそんな悲しい顔をなさらないで)
聖霊を慮る、澄恋の想いとは裏腹に。
※SS担当者:白