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グリーフ・ロスのうみちょすによるシングルピンナップクリスマス2022
グリーフ・ロスのうみちょすによるシングルピンナップクリスマス2022
イラストSS
深緑の片隅。白き墓標は、揺蕩う魔力の満ちる花畑に在る。
眠らずとも生きてゆくことはできる。知っている。
食べずとも生きてゆくことはできる。解っている。
それでも。今日はヒトの真似事を。輝かんばかりのこの夜に添えられた願いは、『今日くらいは、争いを忘れる日』だから。
「――」
名もなき命たちへ。
作られた命たちへ。
アルベドと謗られ、望まぬ生に翻弄された君たちへ。
何者にもなれなかった。或いは、運命の濁流に溺れて灰になった、あり得たかも知れない『私』へ。
どうか、ゆっくりおやすみなさい。
貴方が生むはずだった足跡は、もう伸びることはないけれど。誰かの記憶から貴方が消えても、私は永久に覚え続けよう。
肌を撫でる風は冬には似つかわしくないほどに温みを帯びている。まるで誰かの体温のように。
眠らずとも生きてゆくことはできる。知っている。
食べずとも生きてゆくことはできる。解っている。
それでも。今日はヒトの真似事を。それが彼らにできず、私に出来ることだから。
まだ目を覚ます必要はない。だからまだグリーフは、目を覚まさない。
墓前に添えるのは小さな花束。同情ではなく、いつかの未来で、また会える日を夢見て。
※SS担当者:染