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こうでもしないと貴女は休まんだろう
こうでもしないと貴女は休まんだろう
イラストSS
日頃から騎兵隊を率いて戦うイーリンにとって聖夜は彼女が心から休まる数少ない日である。だというのに彼女は蝋燭の炎を供にし、書物を読みふけっていた。日はとっくに沈み、深夜になってもイーリンはベッドに戻らない。見かねたレイヴンが声を掛ける。
「そろそろ休んだらどうだ」
「お気遣いありがとう。でも、大丈夫よ」
何が大丈夫だというのか。
ページを捲る指は動いていないし、うつらうつらと舟をこいでいる癖に。
柘榴石の様な目だって、夢の中へと溶けていってしまいそうではないか。
仕方ない、と、レイヴンは翼を広げイーリンを包みこんだ。
「なぁに?」
視線は本に向けたままで、イーリンは手をレイヴンの頬に伸ばす。頑なに視線をこちらに向けないイーリンに僅かばかりの苛立ちを覚えつつ、一拍置いてからレイヴンは吐き出す。
「……こうでもしないと貴女は休まんだろう」
「でも」
「ほら、布団を準備するから。枕はこれでいいな? 寝れないならアロマを焚こう。いい物が入ったんだ。あ、ミルクは蜂蜜でよかったか?」
さっきまでの耽美的な雰囲気から一転。
コミカルにせっせと世話を焼きだしたレイヴンに、イーリンは瞬きを繰り返すことしかできなかった。
※SS担当者:白