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イラスト詳細

グリーフ・ロスのもみじによるSS用イラスト

作者 もみじ
人物 グリーフ・ロス
イラスト種別 SS用イラスト
納品日 2022年12月03日

3  

イラストSS

 初冬――大気の温度差が風を産み、大樹の葉がざわめいた。
 その根元近くには、静かに佇む存在が居り、生命の渦巻く迷宮森林において『それ』は――否、『彼女』もまたれっきとした命の一つと数えられている。
 樹木と獣、獣と人、人と機械。
 我というものが想う故にあるのだと定義されるなら、路傍の石が生き物と呼ばれないのはなぜか。それらは想うということをしないのか。ならば植物は想うのか。たとえば精霊力の満ちる、この豊かな霊樹を前に小さな疑問が浮かぶ。石と木、木と自身との違いは一体何なのか。
 さながら墓へ祈りを捧げるように、指を折り、瞼と称すべき器官を閉じる。

 かつて深緑の先、虹の架け橋の向こう。妖精郷では仲間を模した存在と邂逅した。
 妖精を核とするホムンクルス『キトリニタス』には意思があると感じられ、けれど命の源それ自体は他者のものだった。ならば魂は誰のものだったのだろう。
 機械人形第3726号――もといグリーフ・ロスはふとそんなことをぼんやりと考える。
 練達のコンピュータがデータストレージ内をサーチすることと、ヒトという存在が何かを『思い出す』ことと、その差は何処にあるのだろうか。

 あるいは魔種(デモニア)という存在。
 それが自身と同様の秘宝種を元としたものであれば、差異はいずこにあるのか。
 いくつもの戦いが去来する。想い出というものは、どこに格納されている。胸中――と感じられる場所を焦すじんとした想い、歯がゆさは、より厳密には他者がそう呼び、そうとしか当てはめられなかった心や感情というものの在処は――

 人と魔と、ならば竜は。
 たとえばフェザークレスとの戦いでは、何が必要だったのだろうか。
 自身には『よりもっと』何が出来たのか。
 仮に純然な客観性に基づいて演算出来る者があれば、グリーフに問題がなかったことは明白である。
 だが主観というものは、そういう風には出来ていない。
 だから考える。すると『より高みにあったとしたならどうだろう』と、仮定が生じる。

 ――こうして自身をより高みへと導きたいとする『入力元』の正体は。

 今や自身が物品ではなく、人形ではなく、個であることは理解している。
 それは知識か、それとも実感か。
 取得した時期は空中神殿へ召喚されてからか。あるいははじめから、ずっとか。
 けれど現在の全てはいずれも過去の延長線上にあり、明確な途切れ目はない。
 召喚という分かりやすい境は、その実もうすこし曖昧だとも言える。
 そして(あえてそう称すが)彼女自身も、それを受容しているかもしれなかった。

 祈るようにしたまま、美しいと称される紅の珠に手のひらを当てる。
 それは幻想種達がやるような『瞑想』にも似ていた。
 自身に何が出来るのか。
 どうやら自身は希少であるレガシー・ゼロの中でも『ひときわ』らしい。
 ならばなすべきは、どうする。

 指先からブラッディレッドに光る色が零れる。『ヒト』に流れる温かな色。
 何かの解答を得たいというのは、自身という命から湧き出る願いというものなのか。
 戦闘経験が導き出す答えによって、貴石の願いが一つだけ叶うとすれば――

★『覚醒の好機』により、スキル『トレジャー・チャーム』が出現しました!

SS担当:もみじ

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