イラスト詳細
三賊、クリスマスの雪夜に散る。
作者 | 彩音色人 |
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人物 | オクト・クラケーン グドルフ・ボイデル キドー・ルンペルシュティルツ |
イラスト種別 | 3人ピンナップクリスマス2017(サイズアップ) |
登録されているアルバム | |
納品日 | 2018年02月13日 |
イラストSS
「ブェックショイ!! ッあー、くそぉ、絶対イケると思ったのによお!」
――悲痛な叫び声がシャイネン・ナハトの夜に木霊した。
路地裏の、それも人気のない空間には『異様な姿』が存在している。
一本掛けた前歯。いつも通り逞しい肉体を惜し気もなく露出しているグドルフ・ボイデル(p3p000694)は凍えた様にその体を縮こまらせる。
彼の傍らでは蛸髭を軒並み刈り取られたかのように普段の快活な姿からは想像もつかぬ格好で路肩に投げ出されているオクト・クラケーン(p3p000658)の姿があった。
_(:3」z)_だ。
_(:3」z)_のポーズで彼はその鋭い眼光から光を失っていた。
「一点賭けは浪漫………ぐふっ……」
野良猫の引っ掻き攻撃まで喰らったオクトはKO寸前だ。大きなくしゃみをするグドルフに驚き去っていく野良猫がぎゅ、と踏みつけたのはキドー(p3p000244)の脚。
ギャニャァッと猫が驚いた声を上げる。冷たく冷え切ったその脚がもぞりと動いたからだろう。
ああ、可哀想な事に小さな体躯は冬空に晒され凍え切ってしまっている。
「あそこで様子を……見ていれば……ぐぅ」
「ね、寝るな……!」
犬に噛みつかれ引きずり回された傷の生々しさがこの冬空の下で彼の不幸を物語る。
寝ては死んでしまうと声をかける三賊の仲間達。その声を聞いているのかさえ定かでないキドーは「あ、あ、」と何度も呟いた。
「ブェックショイ!」
くしゃみにびく、と体を震わせるキドー。寝るんじゃないと呟くオクトの声を聴きながらグドルフは「寒ィ」と小さく呟いた。
シャイネン・ナハトであれど三賊たちは変わらない。
何時ものように勝負を賭けて今日は運が悪かっただけだ。
運が悪かっただけ――だが、『今日』だったなんてあんまりではないか。
折角の聖夜に。
輝かんばかりの夜に。
その様子を眺めている猫さえも三賊の様子を不憫に思ったのだろうかそろそろと近づきその温もりを分け与えている。
「ね、猫……」
呟く声に返すのは一匹の黒猫のみ。
「チクショウ……ぐぅ……」
「ね、寝たら死ぬ……死ぬぞ……」
無一文。身ぐるみさえも剥されて――「ブェックショイ!」
三賊達はこの夜を全力が謳歌するしかないのだろう。