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霊園のクリスマス
霊園のクリスマス
イラストSS
――そこは霊園。ただの霊園ではない。樹木葬を行う霊園だ。
霊園内にゆらりと光が揺れる。
カンテラの光――或いは霊魂の光か。ぼんやりと明るい霊園内を大柄の人物が歩く。
魔導士然とした格好の彼は羊の頭蓋骨を被り、カンテラを持つ右手は白骨化していた。
彼は霊園内を歩き、大きな枯れ木の前に辿り着くと、用意していた金や銀のオーナメントを飾っていく。
――サタンでも無ければクランプスでもない。彼はただ、人々の平穏と静寂を望む者である。
この季節に咲く花々が風に揺れる。
霊園にも奇蹟の夜は訪れる。彼の手により気がつけば枯れ木は立派なクリスマスツリーとなっていた。
黒洞々たる伽藍堂の瞳が着飾ったツリーを見上げる。煌びやかに揺れるオーナメント達は、まるでその場に眠る霊魂達を呼び覚ますよう。
ツリーの出来映えに一つ頷くと、鎮魂の祈りを捧げる。
――どうか君達の魂は暖かい場所に導かれますように。
奇蹟の夜に捧げられたこの祈りはきっと届いたに違いないと、そう彼は思った。
思いを受け止めるように、霊園に湿り気を纏った風が吹く。
「……いや、寒すぎでしょ。骨被ってきて正解だったよね」
思わず声にだす彼――灰塚・冥利はそう肩を竦めると、今しばらく霊園内に佇むのだった。