イラストSS

　ある日、彼女――焔が持ってきた仕事は、意気揚々と現場へ向かったコルネリアを愕然とさせた。
　新商品の販売を手伝うという簡単な仕事のはずだった。防御力と防寒に優れた商品ということで、鎧、もしくはコートのようなかっちりとした防具を想像していた。
　そう、思っていた、のだが。
「焔ぁ！！　アンタどうしてこんな仕事取ってきたのよ！！」
　練達のドーム状の空にコルネリアの声が木霊する。
　かわいらしいリボンとフリルをふんだんに使ったフリフリヒラヒラのドレス。件の新商品が目の前に鎮座していた。
　わなわなと震えるコルネリアに、怒りのぶつけ先である当の本人も慌てて弁明する。
「ち、違うよ！　ボクのせいじゃないよ！　ボクも普通に販売のお手伝いとかかなって！」
　確かに、仕事の概要には防具のデザインについてまでは記載はなかった。なかった、が。
「うぅん……、こんなことなら念入りに確認をすべきだ……って、なんでもう着てるの！？」
　項垂れるコルネリアを尻目に、焔は自分の丈に合うグリーンを基調にしたドレスを手にしている。
「こうなったら逃げられないんだから、コルネリアちゃんも諦めよう？」
　諦めなのか乗り気なのかわからない友人。後方から聞こえる、スポンサーの声。あとには引けない空気がその場を包む。
　あぁもう！　どうにでもなれ！
　もう片方の赤いドレスを掴み、袖を通す。なぜかサイズの合うそれに疑問を溢したがそれは拾われなかった。
　ちなみに、このキャンペーン。しばらく練達の街頭で宣伝が流され、コルネリアの頭を悩ませたのはまた別のお話。


　※SS担当者：樹志岐