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フォルトゥナリア・ヴェルーリアのさとみによるシングルピンナップクリスマス2021
フォルトゥナリア・ヴェルーリアのさとみによるシングルピンナップクリスマス2021
イラストSS
●力が無くても、救えるもの
強大な魔王を降せるほどの力なんてなかった。
みんなの助けになるほどの力なんてなかった。
私にあったものは、今も昔も、たった一つだけ。
「輝かんばかりの、この夜に!」
道行く子供達や家族連れに、サンタクロースの格好をしてプレゼントを配るフォルトゥナリア。
幻想内の商会が共同で行うチャリティーイベントとして、子供たちにお菓子を入れた箱を配るスタッフに立候補した彼女は、イベントが開始して一時間ほどが経った今なお、疲れた様子を見せていない。
「だって」。その続きを、心の中で唱えようとする彼女の手を、誰かが引っ張る。
「……おねえちゃん」
其処には、兄妹と思しき二人の子供。
少しだけ躊躇った様子の彼らに、けれどフォルトゥナリアは笑顔を浮かべながら、お菓子を二つ差し出して。
「楽しい一夜に、なりますように」
そう言った彼女へと、子供たちも笑顔を浮かべて言う。
――ありがとう!
そう言って駆け出す子供たちに、フォルトゥナリアはまた微笑んだ。
力は要らない。一つのお菓子と、自分の笑顔だけでいい。
たったそれだけで多くの人が救われるこの日が、彼女は、いつまでも続いてほしいと願った。
※SS担当者:田辺正彦