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身も心も暖かな夜
身も心も暖かな夜
イラストSS
●ディアグレイス領にて
「ラピス、お野菜は火が通りましたか?」
「うん。いい感じだと思うよ」
「良かった! じゃあ人参、足しちゃいますね」
「ありがとう、アイラ。きっといいお嫁さんになれるね?」
「も、もう! からかわないでください、ラピス!」
お野菜たっぷりのシチューは何も二人だけで食べるのではない。彼等の領地に住まう子供たちへと振る舞うのだ。
子供たちの中には、アイラが声帯と引き換えに連れ帰ってきたスラムの孤児達も居る。細い身体では冬は越せないと何度も言い聞かせ、そして二度目の冬が来た。今年もまた冬を迎えた。
血が繋がっているわけではない。年齢だって対して変わらない。それでも、守りたいと思う子供たちと迎える聖夜は、何よりもたまらなくて愛おしいのだ。
後ろでソファに寝転がった使い魔のヴユーがはらぺこなのだと言わんばかりに飛び跳ねた。
「ああもう、ヴユー! 人参は後であげますから、大人しくしてください! 埃が舞います!」
「……ヴユー?」
「ちょっとラピス、お鍋から目を離さないでください!」
愛しの妻は使い魔にご執心。ラピスは内心恨めしく思うも、これがディアグレイス家のいつも通りなのであった。
※SS担当者:染