イラストSS

　海洋へと渡り夫婦となった遮那と朝顔の小さな家。
　幸せの住処にあるキッチンから甘い香りが漂ってくる。
　シャイネンナハトの為に朝顔が用意していたクリスマスケーキがいよいよ完成するらしい。
　遮那はそれが待ち遠しくて、先程からキッチンの入口から様子を伺っている。
　子供の様な仕草に堪えきれなくなって笑みを零す朝顔。
「もう、遮那様ったら……」
「いやだって、そんな美味しそうなものを作っているのだから気になるだろう？」
　振り返った朝顔にキッチンへの侵入を許されたと判断して、遮那はゆっくりと近づいて来る。
「もうすぐ出来ますからね、待っててくださいね」
「そうか……楽しみだな。だが、少し寂しいのだ。ちょっとだけ抱きしめてもいいか？」
　ちらりと横目で振り返った朝顔が目を細めるのに、遮那は大切な人を後ろから抱きすくめた。
　力強い抱擁は胸の高鳴りよりも安堵を覚える。
　恋というにはもう時間が経ちすぎていて、それでも溢れる愛情は決して止まることが無い。
「のう……朝顔、愛しておるよ」
「ふふ、私もですよ」
　言葉にせずとも伝わってくる想いはあれど、やはり遮那の口から愛を囁かれると嬉しくなる。
　朝顔は遮那の唇にキスをして、抱きついたまま離れない夫に微笑みを浮かべた。

＊SS担当：もみじ