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シャイネンナハト2021おまけ(鹿野慈IL)
シャイネンナハト2021おまけ(鹿野慈IL)
イラストSS
「そういう日だと分かっちゃいますが、こういう日は……やっぱり苦手ですねぇ」
シャイネン・ナハトの夜となれば仕方の無い事だが、影の世界で一人生きてきたチェレンティには、『光』に満ちたこの日、この時は少々眩しい。
少しでも人込みを避けようと、角を曲がって路地裏へ向かう。狭くて暗くて汚い場所だが、表通りよりはこちらの方が己には合っている――そんな事を考えながら。
「にゃあ……」
か細く、微かな声。その方向に目をやると、真っ黒に近い物陰に溶け込むように、黒い子猫が身を潜めていた。金色に光る目だけがはっきりと浮かび、チェレンティをじっと見つめる。
「おや……おやおや?」
見つめ合いの後、子猫がやがて近づいてくる。そういえば、先ほど鮮魚を買ってきたところ。匂いに釣られたのだろうか。
何となしに額を撫でても、怯える様子は無く。毛並みや身体つきは良くない。捨て猫か野良か、この劣悪な環境でどうにか生きて……といった所か。さてどうしたものか、と考えて。
「仕方ないですねぇ……一緒に来ますか?」
ゆっくり歩き出すチェレンティに、子猫は駆け寄り並んで歩く。輝く夜につかず離れず。こんな同行者も、偶には悪くない。
※SS担当者:白夜ゆう