イラストSS

　ベネディクト＝レベンディス＝マナガルムの領地にある御屋敷。そこはベネディクトがリーダーを務めるギルド――『黒狼隊』の拠点でもあった。その御屋敷では、シャイネンナハトを祝うパーティーの準備が進められていた。
　準備に追われるギルドの面々が、屋敷内を忙しなく行き交う。そんな中、その足元を頻りに動き回る小さな姿があった。
　オレンジがかった毛並のポメラニアン――ベネディクトの使い魔、ポメ太郎は、いつもと異なるギルドの雰囲気もあり、落ち着かない様子だった。
　フラン・ヴィラネルによく懐いているポメ太郎は、ツリーの準備に取り掛かる彼女の姿を見つけて駆け寄っていく。フランはポメ太郎の姿に気づき、にこやかに声をかけた。
「ポメ太郎も手伝ってくれるの？　えへへ、ありがと！」
　フランが抱えていた箱の中には、様々な種類のオーナメントが詰め込まれていた。フランがそれを運んだ先にクリスマスツリーを見つけ、ポメ太郎は鼻を鳴らしながらツリーやオーナメントの匂いを嗅ぎまわる。
「わふっ！」
　――わー、大きいですね！
「わんわん！」
　――これ飾るんですか？　たべものですか？　おもちゃですか？
　ツリーを飾るフランの周囲を、ポメ太郎は興奮気味に動き回る。フランが最後のオーナメントを飾り付けようとした時、ツリーを見上げるポメ太郎の視線の先に気づく。
「あ、それは食べられるのじゃなくて――！」
　ツリーに飾られたドーナツ型のオーナメントを見つけたポメ太郎には、残念ながらフランの制止の声は届かなかった。
　ツリーに勢いよく飛びついたポメ太郎によって、ツリーは大きく傾く。フランは慌ててツリーを支えたが、飾られていたオーナメントがバラバラと床に散らばった。
「だ、大丈夫？　ポメ太郎――」
　フランの心配をよそに、ポメ太郎はドーナツのオーナメントをかじることに夢中になっていた。
　フランはほっとした表情を見せながら「もー！　ポメ太郎！」と軽くポメ太郎をたしなめた。


　※SS担当者：夏雨