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イラスト詳細

過去と未来の距離

作者 楠木なっく
人物 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ
バイル・バイオン
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2021(サイズアップ)
納品日 2021年12月24日

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イラストSS

●『崩壊』前夜
「お久しゅうございます。宰相様」
「うむ、息災のようだな。ダニイール」
「……こうしてゆっくりと話をするのは、教会へ行き、​貴方様の​​元を​辞して以来、でしょうか。聖夜まで仕事とは、まこと貴方様らしい。昔を思い出しますな」
 聖夜を他所にむさくるしい男が二人、燃える暖炉の前で歓談を続けていた。鉄帝国宰相バイル・バイオンと『反体制派』クラースナヤ・ズヴェズダーの司教ダニイール。一見して混ぜてはいけない取り合わせではあるのだが、縁は奇異なるもので。実を言えばダニイールは短くない時間をバイルに仕えて過ごした『国士』でもあった。
「遅ればせながら、絶望の青の開拓の成功、お祝い申し上げます。噂で聞きましたが、一度、不凍港で交易船を見ましたが、相当に潤っているようですな。
 ……それに、例の件も。スチールグラードの近くに教会領を構えることを許すなど、反対意見も強かったはず。御調整を頂けた事、心より感謝申し上げます」
「良い、そんな事は。其方も苦労が多いであろうからな」
 反体制派の中の『穏健派』であるダニイールと、まさしく体制派の事実上TOPであるバイルは『袂を分かって』からも実に上手く事を進めてきたものだ。ダニイールは暴発を防ぎ、バイルはそれとなくガスを抜く。両者が望むのはあくまで帝国の繁栄と民の幸福であり、その一点を以って立ち位置に関わらず常に同士のままだったから。
「もう少しですな。もう少しでこの国の悲願が……乾杯しましょう。この国の未来と、輝かんばかりのこの夜に」
「酒は良いのか?」
 冗句めかして尋ねたバイルは先の答えを知っている。
 何時ものやり取りは心地良く、ダニイールは淡く笑った。
「……勿論、紅茶で」

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