PandoraPartyProject

イラスト詳細

輝かしい夜の賑やかな時

作者 茶月こま
人物 エル・エ・ルーエ
フィリーネ=ヴァレンティーヌ
シキ・ナイトアッシュ
イラスト種別 3人ピンナップクリスマス2021(→おまけイラスト)(サイズアップ)
納品日 2021年12月24日

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イラストSS


 夜の街を行き交う人々は、みな気もそぞろといった様子で周囲に視線を巡らせている。そんな中でひとり、一目散に往来を走る姿があった。もしかしたら、人々の目には一陣の風にしか見えぬかもしれないが。
「お待たせしましたぁ、追加のお食事ですよぉ」
 シャイネン・ナハトを迎え、そこかしこの家の窓からパーティーの喧騒が漏れている。鏡(p3p008705)はその一室に転がり込む勢いでドアを開けると、しかし何事もなかった様な笑顔を見せた。手にはリボンのついた可愛い小箱。中身にも期待が持てそうだ。
「ありがとう! 鏡も一緒に食べよう?」
「それではご相伴に預かりますかぁ」
 カルウェット コーラス(p3p008549)はチキンを手に持ったまま振り返り、鏡を労った。既にフィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)らが準備した食事がテーブルいっぱいに広がっている……ポテトサラダ、ロールケーキ、チキンにチョコケーキ。壁いっぱいに飾り付けられた装飾は、明るい室内をより明るく演出している。カルウェットに誘われた鏡は、コートを脱いでソファにおろすと、食事をあれこれと選び始めた。
「鏡さん、ありがとうございます。……わわ、服も雪がいっぱいですよっ?」
「だいぶ降ってたんだな、鏡殿。頭に雪が積もっているが大丈夫か? 風邪とか……は、無いか」
 エル・エ・ルーエ(p3p008216)と浜地・庸介(p3p008438)は、鏡がもってきた荷物や鏡自身に積もった雪に少しだけ驚く。そんな中、買い出しに行っていたことにも、それを気にも留めず、鼻にも掛けぬ態度にも。
「お食事はたくさんありますわ! 皆さんどんどん食べてくださいませ!」
「うん、これも美味しい。チキンも美味しそうだね。食べなきゃ」
「シキさん、慌てなくてもご飯は逃げませんわ!」
 シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は黙々とバゲットを頬張り、ぽつりと零してローストチキンに視線を注ぐ。その熱視線は、如何にも獲物を逃さぬよう見定めるハンターのそれだ。フィリーネはそんなシキを軽く諌めつつ、さりとて美味しそうに食べる彼女の姿に満更でもない様子。
「……とっても、楽しいですね」
「うんうん、ボクもとっても楽しい! エルも楽しい?」
 ぽつりとエルが零した言葉に、カルウェットは目を輝かせて詰め寄る。エルは「は、はい」とこくこくと頷くと、食事に興じる仲間達に視線を送る。
「エルは、冬が好きです。キラキラした夜空や、静かな時間が好きです。でも、こうして皆さんと楽しい時間が過ごせることも、好きです」
「そうだね、ずっと1人で過ごしているよりずっと、誰かと楽しく過ごせたほうがいい」
 静かな夜、1人の日々。両者は静寂というものを想っている。けれど、共に「それより楽しいこと」を知った。今こうして、仲間達と過ごす日々はその最たるものである。
「私も、とおっても楽しいですよぉ。お仕事してるときも楽しいですけどぉ、やっぱり仲良くが一番! ……ですよね?」
「ああ、俺もカルウェット殿やエル殿と過ごせることは楽しいと思っているぞ」
 2人のしんみりとした雰囲気に気付いたのか、鏡はずいっと顔を乗り出して笑顔を見せた。それが作り物ではないことは付き合いがそれなり長い2人なら直ぐにわかる。庸介の表情は傍目には仏頂面にしか見えないが、しかし声のトーンはやや高い。彼も、彼なりに楽しんでいることは誰の目からも明らかだった。今日この夜は、世界に争いの影はない。
 鏡だって、仲良く楽しく、気のおけぬ者達と過ごすこんな時間が喜ばしくない筈がないのだ。そんな心の余裕が、日常には然程無いだけで。
「それじゃあ、楽しいついでに皆さんにはプレゼントの進呈ですわ! ほらほらシキさんも! 配るのを手伝ってくださいな!」
「私? ……仕方ないねぇ、美味しい食事に免じて手伝ってあげるよ」
 フィリーネは今ここがチャンスだとばかりにプレゼント箱を持ち出した。都合5つ、仲間達の分を周到に用意していたのである。面倒くさそうに応じたシキだが、その瞳の奥に喜色が宿ったのをフィリーネは見逃さない。
「わわっ、プレゼントが、たくさん……! エルも貰っていいのですか?」
「私も貰っていいんですねぇ、ありがとうございます」
 エルはその大きさ、そしてプレゼントというものそれ自体に驚き、喜ぶ。鏡は少しだけ意外そうな表情を見せてから、両手で恭しく受け取る。
「プレゼントとプレゼントで被ってしまったな。俺も用意してたんだ」
「庸介さんも!? そのサンタ袋は飾りではなかったんですの?」
 庸介がしばし出しどころに窮してから準備を始めた様子に、フィリーネは心底驚いてみせた。実際に不意打ち気味だったのだから当然だ。
 そんな両者の応酬に挟まれる格好となった仲間達は、その中身よりも2人の心遣いに、喜びと戸惑いが隠せなかったのだけれど。


 ※SS担当者:ふみの

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