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松元 聖霊のあさぎあきらによるおまけイラスト
イラストSS
輝かんばかりのこの夜に。
混沌に置いてこの日がどれだけ大切な日かは誰もが知っている。
一人で過ごす者。
家族と過ごす者。
恋人と過ごす者。
そして、友人と過ごす者
――幻想のどこかの街の酒場。
其処の奥まった個室から橙色の暖かな灯りが漏れ、賑やかな声が聞こえてくる。
紫の羽織で真っ赤な顔で豪快に笑う人間種。
狐の耳と尻尾を出して既に出来上がっている獣種。
そして大きな帽子を被ったほろ酔い気味の白い幻想種という珍しい組み合わせだった。
「うはははは!! もっと飲め飲め! 夜は始まったばかりじゃ!」
「うぇっへへ……まだまだ飲むぜ~おつまみもってこ~い」
「楽しむのはいいが飲みすぎんなよ……まあ、今日くらいはいいか」
テンションが上がりっぱなしな清舟に既にべろべろな嘉六を聖霊は窘める。
が、健康を守る医者の彼も今日だけは聖夜だからと口煩く言うつもりは無いらしい。
「ん、これ食いてぇ」
「おい、そのままだと零すだろ。取ってやるから……ほら、口開けろ」
嘉六が覚束ない手つきでカプレーゼに手を伸ばそうとするので、聖霊が口元へと運んでやると嘉六は素直に「あー」と口を開けた。美味そうに咀嚼してはまた口を開けるので放りこむ。
その様が面白かったのか、からからと笑い続けていた清舟がふと嘉六の瓶に目を止めた。
つくねに齧り付きながら瓶を箸で指を指す。
「行儀悪いぞ、清舟」
「ええじゃろ。こんくらい。それより、おまん大事そうに酒抱えちょるが何の酒じゃソレ?」
「これかぁ? これはな~、シャイネンナハトだからって、ひっく。巨乳の女に貰った!」
よく見るとラベルにはシャイネンナハトの意匠であり贈り物であることが伺える。
「お前本当にそのうち刺されるぞ……」
「きょ、巨乳の女ァ!? な、なんちゅう羨ましい……!」
すっかり据わった目でドヤ顔をかました嘉六に聖霊は呆れ、此処に来るまでにナンパに失敗していた清舟は非難の声をあげる。
「この裏切り者! 儂にもちょっと飲ませろ!!」
「えぇ~どうすっかなぁ」
「ええい今日は独り身で朝まで飲み明かしちゃるわ!! 付き合えよおまんら!!」
「この店、夜中の一時迄だぞ」
「二次会、三次会やるに決まっちょるじゃろ!! 聖霊はわかっちょらんのぉ! なぁ、嘉六――」
「この酒開けていいか?」
「まだ酒入ってるだろ。それ呑んでからにしろ」
「聞けや!!」
男三人の騒がしい聖夜はまだ始まったばかりだ。
※SS担当者:白