イラストSS

　やあみんな、VDMランドを知っているかな？
　うん、もちろん知っているね！
　よいこのみんなのための、愛すべきテーマパークだよ！
　とらぁボートにメリーゴーランドといったような、様々なアトラクションがあるんだ！
　おっと、年齢確認が頻繁に行われているのは酒類をPRするためのテーマパークだからだね！

「ここが……あの……！？」
「そうです、あの」
　ぱあっと表情を輝かせる焔とは対照的に、正純の脳裏に浮かんだのは「例の」「いわくつきの」とかそんなふうなものだったかもしれない。
　いや、そんなことはない。ないはずだ。
「へええ～！？　すごくおもしろそうだね！　あっあれ！　とらぁ君！」
（とらぁ……）
　テーマパークというからには、もちろんマスコットキャラクターも欠かせないわけである。巨大なとらぁ君がやってきて、やあ、と片手を持ち上げた。
「やっほー！」
　焔がぶんぶんと手を振ると、とらぁ君も返してくれる。焔もまた「サービスがいいなあ！」と上機嫌になり、それを見ている正純も思わず笑みをこぼす。
「こんにちは」
　ぺこりとお辞儀をすると、ぺこりとお辞儀が返ってくる。
　穏やかな時間だ。
「おっ、これがマリ屋？　だね！」
「はい、その通りです」
「すっごく素敵な場所だね！　ボクとっても気に入ったよ。あのね、タイガーゴーランド？　っていうのに乗りたいと思ってたんだ」
「楽しんでいただけて何よりです。ご案内しますね」
（とらぁ……）

「そ、そんなっ……」
　そこには、がくっと膝をつく焔の姿があった。
　目当てのタイガーゴーランドは、生憎、稼働停止中だったのだ。
「稼働停止中だなんて……また業者の皆さんには適切な導きが必要でしょうか」
「え？」
「いえ、なんでもありません」
「すみません……せっかく来ていただいたのに」
「ううん、楽しみにしていたイベントが中止になるのはすごくショック！　だけど、なんていうかもう、仕方ないよね。誰も悪くないんだから……」
「ご経験が？」と思えるほどに慣れていそうな焔。
「そうと決まれば開いているアトラクションを……あれ？　なにかな？　とらぁ君？」
「えっ？」
　そのまま二人の脚を固めると、人力のタイガーゴーランドによってものすごい竜巻が巻き起こった。
「わあああああああっ！？」
「ひょええええええ……！？」
　ぐるぐるぐるぐる……。
　回りながらも、お客さんは楽しんでくれているかな、と思っているとらぁ君であった。


　※SS担当者：布川