イラストSS

　――お願い、一瞬だけでいいから！

　多分、その時が今年分全ての勇気を振り絞ったんじゃないかと思う。だから今がこんなに踏み出しづらいのだ。
「フラン？」
「あ、いや、ええっと……！」
　ルカ・ガンビーノ（p3p007268）の怪訝そうな声にフラン・ヴィラネル（p3p006816）はあたふたと目を回す。
　シャイネンナハト。それは記念日のひとつで、人気者のルカは黒狼隊の集まりだけでなく、色々な場所に引っ張りだこだ。故にフランはどうにかこうにか会う約束を取り付けた、のだが。
（渡すだけ！　渡すだけなのに……！！）
　ただ『プレゼントを渡す』というだけのことにどうしてこれほどの勇気が必要となるのか。彼女はまだ、その胸の奥に育ち始めた想いの名を知らない。
「フラン、ほら」
「え、うん。いやあの、え？　これ……うぇえ！？」
　不意に彼からぽんと渡されたものを思わず受け取って、それから彼の顔と渡されたものを交互に見比べる。それからそれから――女の子にあるまじき声を上げた。そんな彼女の反応が面白いと言いたげにルカはくつくつと笑う。
「あたしに！？」
「他にいないだろ」
　それもそうだ、とフランは改めてプレゼントを見下ろす。嗚呼、なんて嬉しいんだろう。大切にしよう。
「……あの、ね、あたしも――」
　ようやくフランも顔を上げ、背に隠していたプレゼントを差し出す。彼にとっても優しい夜でありますようにと、そう願いながら。


　※SS担当者：愁