PandoraPartyProject

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リア・クォーツのヤぴによるおまけイラスト

イラストSS

●恋する乙女同盟は……
「帰れ」
 うら若く可愛らしい女性陣を出迎えるにしては余りにもその言葉は辛辣過ぎた。徹頭徹尾、微塵も欠片も融和の無い声色である。強烈な主張と結論を叩きつけるかのような調子である。
 空中に投影されたシュペルの顔は全身全霊の不本意に満ちていた。リア、ドラマ、ルル家、レジーナ……華やかなりし乙女達は塔のフロアの一角に車座に座り、聖夜らしい女子会に興じていた。
「いいから帰れ。小生は暇じゃないんだ。
 恋する乙女だか何だかだと言うのなら、聖夜だか何だかに現を抜かし、粘膜の幻想にでも浸っていれば良いではないか」
 言葉は相当な毒を孕んでいたが、四人が居座るフロアはすっかりシャイネン・ナハト仕様に変えられていた。普通ならば時間の掛かる大工事だろうが、シュペルに掛かればこの程度は造作も無いのだろう。『むしろシュペルに掛からせられるリアが異常と言わざるを得ないのだが』。
「アンタねぇ……」
 そんなリアが呆れた調子で溜息を吐いた。
「そんなんだから友達の一人も居ないで、聖夜に引きこもる羽目になるのよ? あたしが折角こうして――綺麗所を用意してあげたんだからもっと感謝するべき所でしょうが」
「百歩譲って……そうだな。
 そっちの幻想種と旅人二人は『綺麗所』としてやってもいいが。残る一人は山賊か何かに見えるが、気のせいかね!」
「ぶっ飛ばすぞ、てめえ!」
(仲が良い事。我(わたし)も妬けるわね)
 澄ました顔でお茶を啜ったレジーナは、その喧々諤々のやり取りに自身とお嬢様を重ね合わせてみた。
(……駄目ね。きっと勝てないわ。負けてしまう)
『惚れた弱味』は如何ともし難いものだ。
 リアは天然で無邪気に――理由は知れないが、シュペルはもう少しやり難そうにも見えた。
「まあまあ」
 今にも始まりそうな大喧嘩をルル家が仲裁した。
「折角の聖夜なのです。塔の神としては、挑む冒険者を戯れに見守るのも良いでしょう!?」
「……敬意が無い、経緯が」
 シュペルは相変わらず不満そうだったが、何の事はない。
「シュペル殿はその気になれば拙者達を放り出す等、児戯にも満たない朝飯前の筈! と、いう事は! 何だかんだ言いながら結構この時間を愉しんでいるものと思われます!
 ですから何の問題も無いと判断出来ますね!!!」
(……サイコパスみたいな解説してますねぇ)
 ルル家のあんまりな言葉にドラマは小さく笑った。
 超越存在の割には随分と人間味のある人だと思う。
 分かり易過ぎて……レオン・ドナーツ・バルトロメイ(わかりにくいおとこ)に悪態の一つも吐いてやりたくなる。
(まぁ、嘘が上手ですなんて顔をしている割には、騙し切ってもくれない人なんですけど)
「……おい、貴様。塩エルフ」
「はい?」
 水を向けられたドラマが小首を傾げた。
「お前が一番話が通じそうだ。何とかしろ、そこの恐竜を」
「貴方が無理なら無理ですね!」
 100円ショップのやる気の無い店員のような。清々しい笑顔を浮かべたドラマにシュペルが呻く。
「敬意が無い。敬意が……」
「シュペル君が珍しい本を下さるならありますよ」
「それが無い! 全然無い!!!」
「諦めるのだわ。今、汝(あなた)『シュペ』っているのだわ」
「――貴様にだけは謂われたくないわ!!!」
 仕様の無いやり取りに笑いが零れた。
 聖夜の一幕にはあまりに風情が無いが、たまにはこんなシーンがあってもいいのだろう!

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