イラストSS

　同じ場所、同じ丘、同じ月夜の日――雪景色を眺めるアルテミア・フィルティスとシフォリィ・シリア・アルテロンドは、互いに幼かった頃の記憶を思い返す。
　幼い日の暖かな記憶――アルテミアの妹、エルメリアと２人で、雪降る丘の上から月を眺めていた。今は――今でも『３人』で、形は違うものの、またあの丘で月を眺めている。
「綺麗……ここの景色は、あの頃と変わらないわね」
　どこか寂しそうな笑顔でつぶやくアルテミアに対し、シフォリィは「そうですね……」と静かに相槌を打つ。
「ねえ、あなたもそう思わない？　――エルメリア」
　そう語りかけたアルテミアの右手には、赤い宝石と結び合わせたチェーンが握られていた。シフォリィもアルテミアにならうように、エルメリアの形見を手にしていた。
　今は亡きエルメリアを偲ぶ2人は、月の向こうの空に思いを馳せる。見えないどこかで、笑いかけているかもしれないエルメリアの姿を思い浮かべるアルテミア。その横顔を一瞥（いちべつ）したシフォリィは、哀愁の入り混じる笑顔を浮かべてつぶやいた。
「本当に、月が綺麗な夜ですね……」


　※SS担当者：夏雨