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マリア・レイシスの香波亜季によるおまけイラスト
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●或る鉄帝青年の話
――週末は雪らしいね、と誰かが言った。
けれど、雪だからといって決めていた約束を別の日にしよう、なんて言うほどこの約束はどうでもいいものではなく。
雪みたいだけれど、と口ごもった僕に、彼女は「そっかぁ。シャイネンナハトって感じだね!」と笑ったから、そうだねと返して――反故にも、延期にもされないことにほっとした。
前日は何を着ようか迷いに迷って、早寝をするはずなのに気付けば時計の針はてっぺんを過ぎていて。
夢の中でのエスコートは百点満点で、目が覚めてそれが現実じゃないことに肩を落とした。
解っているんだ。ただの憧れで、これは叶う筈ない。
君にとってはただの買い物。僕にとっては大事な一瞬。
だからせめて一秒でも長く君の姿を見たいと思って早く家を出た筈なのに、角を曲がった先にはもう君が居たから、僕は本当に間抜けな顔をしていたと思う。
「おはよう、寒くなかったかい?」
あ、とかうん、とか。
返す言葉はあまりにも情けない。
はい、と君が笑って差し出してくれた缶コーヒーは温かくて――ふたり、それを飲みながら歩く雪道は、足元が浮ついて。
苦手だった珈琲も、好きになれる気がした。
※SS担当者:飯酒盃おさけ