イラストSS

『練達に、一際イルミネーションが綺麗な場所があるらしい』
　そう聞いたのは何時の話だったか。ただ、このシャイネンナハトにしか行われないという話だけは確かだった。
　ただ、未だ点灯には早かったらしい。未だ薄暗い街並みをヴェルグリーズは進む。…本当にこの場所で合っているのだろうか等と、ほんの少し不安を覚えたその時だった。
　真っ直ぐな道の最奥から、自分の立つ場所へ向けて光の波が押し寄せる。その間も一瞬、気付けば歩いて来た道までが光の渦のように華やいでいった。
「これは…」
　上手く、言葉に出来ない。代わりに零れた吐息が白く、宙へと消えていった。
　イルミネーションの光を照り返し銀を返す己の髪と、美しい光景を焼き付けんとばかりに視線を巡らせる。
　忘れてしまう事のない様、そして、また何時か誰かと着た時の為に。その何時かを想い、ヴェルグリーズは目を細めた。


　※SS担当者：月見里あとり