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『裾を引く』
『裾を引く』
イラストSS
陽も傾き始め、茜がちらほら舞う雪を煌かせているそんな時刻。
一つ傘の下で、雑踏の中を連れ添って歩く二人の影。
「……あら?」
「…………」
最初は二人でお出かけだとはしゃいでいたすずなを微笑ましく思っていた小夜だが、それも時間が経つにつれ、彼女が次第にソワソワし始めてどうやら落ち着きがない様子でいることは目に見えずとも気配で察していた。
だから急に立ち止まったすずなに袖を掴まれても、それは小夜にとってそれほど意外ではない。
「どうしたの?」
「……」
でも袖を引いた当の本人にとっては自らの行動が意外であったようで。彼女の口は言葉を紡げずに、耳はぺたんと伏せられて不安げに揺れる尻尾。さらには赤くなった顔を俯かせてまでいる。
「その、ですね。今日は、ね……」
そしてやっと口を開いたかと思うと、消え入りそうなか細い声で何やらモニョモニョ言っている。
理由は全て、小夜の袖を掴んだ右手とは反対側に。可愛らしくリボンを結ばれた小包一つ、すずなの左手に。
そんな彼女の仕草は見えずとも、全てを察した小夜は優しく笑って。
「ねえ、今から私の家に行きましょう? 渡したいものがあるのよ」
——そこでお互いプレゼント交換といきましょう。
※SS担当者:外持雨