イラストSS

　シャイネンナハトで騒がしい街から離れ、豊穣の奥山にある宿。少々値は張るが評判の良いと ころだった。
　そこへ一仕事を終えた風情の女、不動 狂歌が入っていく。
　年末も差し迫ったこの時期だからこそ、泊まりたかった人気の宿。
　豊穣の逸品と名高い地酒を地元産の野菜と魚介を使った豪勢な食事で堪能して、見事な庭園 のライトアップ。
　それらを夕方のうちに見て楽しみ、歩き疲れた狂歌は少し部屋でまったりしていた。 「そろそろ風呂に入るかー」
　狂歌は大きな共同の天然温泉には進まず、内風呂の扉を開け放つ。
　エグゼクティブランクの部屋には個室サウナと露天風呂が付いている。それゆえに選んだの だ。
　そこへゆっくり浸かり、仕切り壁の向こうから見える大きなクリスマスツリーに微笑みかける。 ふとそこに白い雪がちらちら、星が零れるように舞い始める。
「おお、思いがけず雪見露天風呂になったな。いやー、これまでの疲れが取れるようだ」 気持ち良いな、と溢して肩も湯の中へと沈める。
　俗に言うお一人様ならでは、誰にも邪魔されない、してこない最高の贅沢。 一年の締め括りに相応しい、輝かしい夜だった。


　※SS担当者：桜蝶 京嵐