イラストSS

　シャイネンナハトの日はどこもかしこも穏やかな空気に包まれている――
　ブレンダとシルトにとっても、きっと『そう』であったろう。

「……なぁシルト。貴族なら、遊楽伯主催のパーティでも開かれていたのでは？」
「ん？　はは、どうだったかな――
　ま。パーティなんかよりこうやって二人でいる方が楽でいいね」
「それは同感だ。二人と言っても……今日はインベルもいるがな」

　と。直後にブレンダに飛びついてきたのは、インベルという犬だ。
　小型犬程度の大きさのインベルは構ってほしいかのようにブレンダの膝下へと至る――シャイネンナハト仕様に首のスカーフを留めているボタンが目に入れば、なんとも可愛らしさが増しているものだ……
　さすれば自然にシルトからもブレンダからも笑みが零れようか。
　シルトは貴族の身。本来であれば貴族としての用事があるのでは――と想いもするが。
（……ま、今日と言う日は、な）
　深い追及はしない。混ぜ返したって、誰が楽しかろうか。
　それにそもそもきっと己も――
「んっ？　ブレンダ、何か言ったかい？」
「――何も？　気のせいでは？」
　この一時を楽しむのを、心のどこかで臨んでいる気がした。
　……時は過ぎる。穏やかに、ゆっくりと針が進む様に。
　眼鏡を身に着け、本に視線を落とすシルトを眺めながらインベルの首元も撫ぜてやろうか。

　あぁ――輝かんばかりのこの夜に。もう少しだけ祝福を……