イラストSS

●The ghost apple sing a frost sky.

――雪の日に思い出すのは、冬にも花が咲くと教えてくれたあの子のこと。

カーテンを開けたジルーシャ・グレイ（p3p002246）は白い眩しさに片目を覆った。
輝かんばかりの夜に降った雪は、世界を一面の白銀に染め上げている。
散歩にはもってこいの日だと着慣れた防寒具に袖を通す。冬の寒さと仲良くする為の必需品だ。

森の中を歩いていると、時折、霊感にも似たひらめきや思いがけない偶然に出逢うこともある。
ジルーシャはそういった小さな楽しみを見つけることが好きだ。そう、教えられた。
「冬の贈り物ね」
はらりと落ちてきた雪の花を追いかけて、見上げた先にはゴーストアップル。
枝にひとつだけぶら下がった透明な林檎は自然が生み出した氷の芸術だ。
アップルティー。スパイスを効かせた香水。それからそれから……。
氷の林檎と聞いて泉のように湧き上がるイメージに胸が温まっていく。
「教えてくれてありがとう」
温かい眼差しが、慈愛を湛えて氷鏡の向こう側に微笑みかける。
風に混じった精霊達の囁きが左耳のケツァールの尾羽を優しく揺らしていた。


　※SS担当者：駒米