イラストSS

「輝やかんばかりのこの夜に！」

　──今日はシャイネン・ナハト。
　街は何時もよりも沢山の光で彩られ、街行く人々には笑顔が灯る。その笑顔を届ける為に奔走しているのが赤い服のサンタクロースだが、勿論サンタにも休息は必要なのだ。

「今日は何だか冷えるなぁ…」

　雪のちらつく中、ベンチに腰を下ろしたシキは小さく零した。防寒装備は勿論しっかりとしたものだが、それを差し引いても寒いものは寒いのである。何度か手を擦り合わせ息を吹きかけるも、温まるより先に白い靄となって消えてしまった。
　そんな折、ふと目の前に飲み物の缶。ラベルに書かれた文字は、『ココア』。

「あ、」
「俺も飲みたかったから、ついでだ」

　顔を上げた先には見知った顔。世界は自分の分も片手に、差し出した方の缶をシキへ手渡すとその隣に座ってプルタブを引く。普段はシンプルな服装の彼も今日はサンタクロースの衣装に身を包んでいた。とはいえ多少息苦しいのか、前は少し開いていたのだが。
　手の内の缶はじんわりと手袋越しに熱を伝え、蓋を開ければ僅かに甘い香りが漂ってくる。
　先ずは一口。冷え切った体に染みこむ暖かさとほんのりとした甘さがゆっくりしみ込んでいくようだ。
　安堵の息も白く空へと立ち昇る。世界はシキの様子を横目に、自分も暖かなココアをゆっくりと飲み進めていた。

「あったかいね…」
「ああ」

　誰かが一緒に居てくれる。こんな温もりの共有も、シャイネンナハトの一つの形かもしれない。


　※SS担当者：月見里あとり