イラストSS

●Which of us two then is the worse off？

　しみったれた酒場にアコースティックギターの音と酔いどれのご機嫌な唄が響く。集った者と云えば何処を見ても男、男、男。
　平時の此処での唯一の癒しと称して過言では無い、可愛らしい店主の愛娘にして看板娘のアンジェリカは男の家に転がり込んでいるらしく、彼女へのセクハラを楽しみに訪れた客達からはブーイングが上がった。
　其れでも酒の力で何となく善い気分に成って来た頃、こんな日には無粋な暴力で以てスイング・ドアが近くに寄りかかって居た酔っ払いごと店の中程まで弾け飛ぶ。次に、口元を布で隠し各々が余りに粗雑な武器を手にして押し入れば、『やれ、男臭くていけねぇ』と真っ先に店主はカウンターの下へ避難済みだ。

「ヤェツク殿、イケるかい？」
「おうおう、総員机でバリケードを作れ！　そんで有りっ丈酒を飲ましてやれや！」

　店主が少しだけ青い顔を出し『やめてくれ』と目で訴えていたがもう遅い。
　中央に躍り出たヴェルグリーズが盗賊を蹴り上げ、辺りから飛んで来た酒瓶が派手に割れた。
「あー……コイツはいい酒だな、高いやつ…… まあいいか！」
「中々やりますねぇ、さぁさ皆さんお立ち合い！」

　――輝かんばかりの、此の夜に！


　※SS担当者：しらね葵