イラストSS

●The snow-spangled Apron.

　色とりどりの野菜サラダには一寸手間でも茹で卵は欠かせない。
　立派なチキンレッグは照りを出す為に秘密の隠し味を入れたソースを煮詰め、繰り抜くのに苦労した丸ごと南瓜のポッドシチュー。こんがり焼いたバゲットはスープのお風呂で良い湯加減。
　其れからたっぷりのクリームを絞った苺のショートケーキだって、『ママ』とも成れば必修科目なのだ。
　愛おしい人の笑顔の為なら作り過ぎてしまうのもご愛嬌。そんな何時だかの未来を思い浮かべながら、朝からキッチンに立っていてお腹ぺこぺこのふたりの胃袋に御馳走は納まる事になる。

「はい！　澄恋さん、あーん」
「あら、此れは此れは。あーん――……、……！」
「如何なのだわ？　カレー粉を隠し味に入れてみたのだわ！」
「お子が喜ぶ味ですね。其れに、カレーが好きな旦那様も多いでしょう」
「どんな男の人だって心は何時迄経っても少年なのだわ！」
「嗚呼成る程、華蓮様が思い浮かべてた人が、わたし、判っちゃったかも識れません」
「！　其れは……ないしょなのだわー！」
「あらあら、ではお酒でも入れてゆっくりお聴きするとしましょうか、ね？」
「絶対答えないのだわ！　負けないのだわ！」


　※SS担当者：しらね葵