イラストSS

　ぱちり、と指先の魔法が映し出す左右逆さまの像。ひとつ、ふたつ、カメラのフラッシュを浴びたように瞬きを。光を呑む紫の瞳には熱を宿し、アリス・アド・アイトエムは目の前のもうひとりの自分を見つめた。
　白くなめらかな肌に淡桃色のベビードールの透けた布地が色香を添え、支度前の下ろした明るい色合いの髪も相まったならしっとりとした女性らしさを感じさせる。
　常より大胆な姿に今日という日の『特別』を意識した途端、惜しげもなく晒された胸の下で騒ぎ出す心臓は今にも弾けてしまいそう。
｢大丈夫……！　アリスなら……うまくやれる……！｣
　そう口に出して気合を入れる。それもこれも、まさか自分が異性の恋人とシャイネンナハトを過ごすことになるなんて！
　あんなに苦手だった男の子。面と向かって話すのも難しかったのに好きになれる相手が見つかるとは、ましてや付き合うことになる日が来るとは思いもしなかった。女の子となら沢山出会ってきたけれど。全部全部が初めてのオンパレードだけれど——もう１度覗き込んだ鏡に答えはある。だって、とっくに幸せそうなのだ。嬉しくて、嬉しくて、そこに加わる緊張だってきっと輝かんばかりのスパイスなのだ。
　さあ、準備を始めよう。いそいそと髪ゴムを咥えた唇が恋人と重なるまで、あと××時間——


　※SS担当者：氷雀