イラストSS

　——雨が降っている。

「「…………」」

　ただただ無言のまま、花畑に寝転がって曇天を見上げているランドウェラとシキ。
　どちらかが言い出したわけでもなく、意味もなく。二人して雨の中、傘も刺さずに花畑に身を横たえる。
　いったいどれほどの間、ただ横になっていたのだろう。
　雨粒たちが二人の武器についた血を洗い流すには充分な時間で、それでも彼らの記憶から人を殺めたという事実が流れて消えていくには足りないくらい短い時間。
　ぼんやりと寝転んでいるのにも何かしら目的があるわけではなく、ただ徒らに時間が過ぎていくだけで。雨に打たれたまま二人の身体はとっくに冷え切って……

「このままじゃあ僕ら、風邪ひくかもなぁ……」

　——それでも二人は動こうともしない。

　二対の瞳は虚ろなまま、空を映す鏡のようで。
　それは正しく二人の心を表して。
　もう思考することすら嫌になるくらいに。
　どうしようもないまでに、全てを放棄したくなるほどに、世界の全てが色褪せて見えて。
　感情を捨てた視線の先、灰色の空から降る雨が無情に二人を打ち据えて。
　それでもなお、二人が動く気配すらなく。
　空一面の分厚い雲は途切れず、雨は止まない。陽の光は訪れることなく。

　——虹の橋はかからない。


　※SS担当者：外持雨