イラストSS

　暗鬱な闇に覆われた路地に、火が点る。
　たちまち漂う煙の匂いに綾姫は眉を寄せる。
「なぁんでせっかくの祭りだと言うに、こんなしみったれたことをしてんのかね」 煙草に火を付けた嘉六が長いため息を吐き出す。
　綾姫はしかめっ面のまま待って下さいと嘉六を追い掛ける。
　互いが互いに取って今宵の相方に過ぎず、好みではないことは分かっている故だ。 時折漏れ届く光は華やかな街の灯りか、と裏から裏を渡りながら綾姫は羨ましく息を吐いた。 一歩が自分の三歩ほどある男も、相当なんじゃないかと思わずにいられない。 だがそれは嘉六とて同じことだ。胸は良いものを持っていそうだが生真面目すぎる。 遊びのない女は苦手だと繁華街の光の隙間で毒づく。
「こちらが依頼のあった地下遊戯場ですね。こんな夜ですから、調査のみ。良いですね？」 「わぁかったよ。シャイネンナハトの裏でおイタは良くねえからな」
　二人はその門扉を潜り、闇へと溶けていくのだった。
　表の人たちがいつまでも笑えるように。


　※SS担当者：桜蝶 京嵐