イラストSS

　雪のちらつく幻想の街――けれどそんな寒さも、一枚扉を隔てれば遠い世界。
「あ、ねぇねぇ手袋こっちにあったよ！」
「わかった、そんなに引っ張らなくても大丈夫だって」
　二人で買い物に行こう――そうシキとリウィルディアがやってきたのは、街の雑貨屋。
　プレゼント選びの客が多いのだろうか、何処か浮足立った気分の店内は二人の心もくすぐって。
「みてみて、これリウィルディアに似合いそう！　あ、でもこっちも似合うかな……うぅん」
　シキはといえば店内に入ってからずっとこの調子で、自分の買い物のことなどすっかり頭から抜け落ちている。
（……全く、シキはいつもそうなんだから）
　優しい友は、いつだって自分より周りを優先して。こっちだ、と掴んだその手が冷え切っていることも気にしていないのだろう。
　赤い手袋をシキから受け取り、手に嵌めたリウィルディアはその手をシキへと掲げる。
「ふふ、似合うかな？」
「似合う、すっごく似合うよ！」
　その笑顔に、リウィルディアも釣られて頬が緩む。
「……あ、ほら。シキもこういうのはどうだろう」

　ブラウンの手袋。きっとシキには似合うだろう。
　そうして外に出れば、今度はきっと二人とも手は暖かいさ。


　※SS担当者：飯酒盃おさけ