イラストSS

●断ち切れぬ彼への憧憬
　一目見たその時、彼の麗しさに目を奪われ焼き付いて離れなくなるのは無理も無きことだろう。
　スタイリッシュ、という他にない切れ味の鋭さを伺わせる美貌と甘い笑み、周囲を彩る光と辺りに降り注ぐ色とりどりの箱、箱、箱……という現実離れした光景に。

「ハッピーシャイネンナハト！」
　贈り物を振り撒く使徒の格好をした美青年は、さりげない流し目と共に偶々道行く女性へとプレゼントの入った箱を差し出した。
　訳も分からぬまま、されど――光の照らす彼の格好良さに訝しがる感情をも断ち切られ、女性は頬を染めながらそれを受け取った。
　中身は分からない。
　されど中身が例え詰まらぬものであったとしても、今日のこの日の忘れ難き鮮烈な印象と共に思い返せる尊い品として受け取られるのだ。

　――プレゼントを受け取った若き女性は何も知らない。
　彼が――断ち切るものの精霊であり、ケーキから縁まで断ち切る者であることを。
　されど、されど――彼女の脳裏には深く刻まれる。とても格好いい男の切れ味の鋭い笑顔と共に差し出されたプレゼントの重みと、輝かしい周囲を彩る降り注ぐプレゼントの幻想的な光景を。

　この憧憬だけは、中々断ち切ることは難しいのかもしれない。


　※SS担当者：表川プワゾン