イラストSS

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『この良き夜に、フライドチキンは如何ですか』
　……シャイネン・ナハトの夜。露天巡りをしていた亮の目の前に、その店は存在していた。
　店頭に立っているのは、羽毛がふわふわの茶色い鳥。
　名を勘解由小路・ミケランジェロというその旅人は、店の前で呆然と立つ亮に対して気さくに話しかけた。
「おやお客様。当店の商品をお買い求めで？」
「いや……何か見た目のインパクトが凄いから立ち止まっただけ、だけど？」
「そうですか。しかしこれも何かの縁、ぜひとも当店の商品をお買い求めください」
「……そ、それじゃこのチキンバーレル一つ」
「――そうですか。それをご注文されるとはお目が高い」
　は？　と疑問を浮かべる亮の前に、ミケはどかっと人間サイズの巨大バケツを置き……自らその中に入った。
「さあ、どうぞお召し上がりください」
「いやお前何してるの！？」
　――口ではそう言うものの、なぜか自分の腕がミケに伸ばされていくのを自覚する亮。
　自分の意志なのか否かも判らぬその行動に亮が悶えるさまを、ミケは潤んだ瞳で優しく見守っていた。

　……その日の夜。亮は某所のベンチでうなされているところを知己に起こされた。
　その傍らには暖かなチキンバーレルが一つ、置かれていたとか何とか。


　※SS担当者：田辺正彦