イラストSS

●こんな日でも
「そう上手くは行かないか！」
　鋭く呟いた錬はいざ目の前にした塔の試練に内心だけで舌を巻く。
（高度な自律性から察するだけでも、ギミックが多すぎる。まさか奴本人が細かく操作しているとも思えない。それ以前に整備性を考えても、入る度に姿を変える形質を考えても……技術者としては頭がおかしくなりそうだぜ）
　Tower of Shupellとその主、シュペル・Ｍ・ウィリーは錬にとって混沌で最も興味深く重要な存在に違いなかった。湿っぽい感情はそこに一切ないが、唯只管の高みとして、目標として。
「やれやれ、こんな日にも来るとは物好きな奴め」
　モニター越しに彼の『奮闘』を眺めるシュペルは半眼で、呆れ返っていた。とは言え、頑固な連中は帰らないのだろうとも分かっている。事実、一歩でも近付きたいという想いだけが錬を聖夜の挑戦に突き動かしているのだから当然だ。
「こんなところで諦めないからな」
　聞かれている前提で錬は宣言する。
「分かっているが」とシュペルは溜息を吐いた。
「絶対に俺を認めさせてやるからなー！」
「認めないが」と可愛くない事を言う。
（……いや、嘘だな）
　シュペルの溜息は更に大きなものとなっていた。
（少なくとも貴様も含めた何人かは特筆すべき程度には『面倒くさい』）
　他人に価値を見出さない男にとって、無理にでも認めさせられたその事実はどうにも重いものになる――