イラストSS

「さぁみんな！　頑張って飾りつけしようね！」
「「おー！」」
「とらぁ……」
　マリア・レイシスの言葉に元気のよい返事が2つ。気がないけど返事してくれた声が1つ。
　ここはマリアの領地に存在するVDNランドという――イレギュラーズの一部からアルハラランドど呼称される――場所。特産品である酒をPRするために誕生したテーマパークであり、パーク内にはお酒の博物館が併設されているのだ。
　パーク内は勿論であるが、この博物館もまたシャイネン・ナハトに合わせて飾りつけをしたい。というわけで領主であるマリアとマスコットたちが揃ったわけである。
「ご主人と親分の為に頑張りますわー！」
「ありがとう！　きっとヴァリューシャも喜ぶよ！」
　気合を入れるトラコフスカヤちゃんにボクもとブラックタイガー君が気合を入れる。
「ボクも虎としてご主人の期待に応えるんだ！」
　虎じゃなくてエビだけどトラチェックは通過した。ボクは虎！
　そんな2人（？）はツリーに飾られるようなオーナメントを館内の色々な場所へ飾り付けていく。キャンディ型やくつした型、もちろんお酒の形をしたオーナメントも忘れずに。
「この樽にはモールを巻いてしまいましょう！」
　トラコフスカヤちゃんは酒樽に金ぴかモールを巻きつける。その上からぷらん、と垂れてきた電飾はマリアのものだ。
「それをどこかに張ってくれないかな？」
　電飾の先をキャッチしたブラックタイガー君はあっちをキョロキョロ、こっちをキョロキョロ。この場の主役は酒なので、それが映えるような場所を探して電飾を巻きつけ、張っていく。
　そんな中で、床にぺたんと転がっているのは。
「とらぁ……」
　VDMランドに迷い込んだ謎の個体であり、超大きな――ホッキョクグマサイズの――マスコットである。彼は何をするでもなく転がっていた。
「とらぁ……」
「とらぁ君、踏まれないように気を付けてね！」
　マリアの言葉にも変わらない声を上げるとらぁ君。その顔はいつもと変わらず(　╹⋏╹)なのだが、表情豊かだと言うトラコフスカヤちゃんは――。
「ご主人、どうやらお腹が空いているみたいですわ！」
「そうだったの！？　ごめんね、すぐご飯を持ってくるからね……！」
　愕然とするマリア。すぐさま飛び出していいた彼女の背を見送り、とらぁ君は館内を見上げる。
　不定期に訪れるそこは、今までで一番ぴかぴかと輝いていた。


　＊SS担当者：愁GM