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イラスト詳細

華蓮・ナーサリー・瑞稀の鹿野慈による2人ピンナップクリスマス2020(横)

作者 鹿野慈
人物 華蓮・ナーサリー・瑞稀
レオン・ドナーツ・バルトロメイ
イラスト種別 2人ピンナップクリスマス2020(サイズアップ)
納品日 2020年12月24日

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イラストSS

●幻想聖夜
『でも』。或いは『だって』。
 会話において感情の揺らぎと共に発されれば、何の生産ももたらさない無為なやり取りである。それに多少の意味と大いなる効果を見出そうとするならば、結局は『そう言った相手次第』で間違いない。

 ――でも、だって! 私はどうしてもレオンさんと踊りたいのだわ!

 健気な乙女の些細な我儘なんて、大体の場合叶えてやるのが甲斐性だろう。
(――ったく、何て顔してやがる)
 緩やかな室内楽の調べに揺れて、身を任せる――上目遣いで見つめる少女の瞳が潤んでいた時、レオンは内心だけで苦笑した。
 天真爛漫で無邪気で――素直で真っ直ぐで優しい、『良い子』。
 華蓮・ナーサリー・瑞稀を評するにそれ以上に簡単な言葉はなく、同時に――彼女は少なからず『そうであるように努めてきた』に違いない。
 例えば困っている人が居たら積極的に手伝いをする。
 例えば喧嘩になりそうな時があったとしても深呼吸して良く考えた。
 例えば――好きな人の周りに可愛い子が沢山いたって、自分がてんで子供扱いだったってやきもちをやかないように頑張ってきたのだ。でも。
 時が過ぎ去れば少女も羽化する。
「綺麗になったじゃん」
「……えへへ」
 無遠慮なバリトンが耳元を擽る。
 少女を終えて大人になる――齢が二十を数えたのは唯お酒を舐められるようになっただけの意味ではない。
「レオンさん、私頑張るからね」
「分かってるよ」
『何を』とは言わず、聞き返さず。
 聖夜の時間はゆっくりと過ぎる。
 それは夢のようで、泡のようで、嬉しくて、でもきっと儚くて――
 うっとりと目を閉じた華蓮は昔読んだ幸せな物語のさいごを何となく思い出していた――

担当:YAMIDEITEI

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