イラストSS

　満面の笑顔を浮かべた秋奈は、傍らの男を引きずっていく。
　男――――幻介の腕には大量の荷物が積み上がっている。それらは全て秋奈が購入した物だ。
　事の起こりは、秋奈が訪れた事から。
　買い物に付き合って欲しいというお願いを軽い気持ちで受けた。それが幻介にとって後悔の入口となろうとは、その時の彼には知る由も無かった。
　歳末バーゲンという名目で安く売り出される様々な商品達。
　そしてそれを気の向くままに購入していく秋奈。もちろん、荷物は全て幻介持ちである。
　力の無い彼の腕に積み上がっていく荷物。肩から腕が抜けそうだ。
　もう勘弁してくれ、と言いたいが、付き合う事に同意したのは自分の為に言い出しにくい。いや、しかし、このままでは死んでしまう（精神的にも物理的にも）。
　意を決して口を開く。
「勘べ……」
「よっしゃー！　次はあっちにいくぞっ」
　彼の言葉を遮り、引きずっていく秋奈。この様子だと多分彼の様子に気付いていない様子だ。
　開いた口を金魚のように開閉させながら、幻介は引きずられていく。
　買い物という戦いをする秋奈、如何に自分の現状を理解させるべきかと悩む幻介。
　二人の戦いは始まったばかりである。


　＊SS担当者：古里兎　握GM