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長月・イナリの白兎赤鳥によるシングルピンナップクリスマス2020(縦)
長月・イナリの白兎赤鳥によるシングルピンナップクリスマス2020(縦)
イラストSS
●冬の言祝ぎに彼女は笑う
聖なる夜の街を行くにはその姿は、洋の言祝ぎに混じる和の御使いか。
長月・イナリもこの宵には姿を改め、聖夜の街往く者の少なからぬ装い――言うなれば白き衣を纏った白髭の御使いのように。
白きとんがり帽子に収まりきらぬ狐耳を揺らめかせ、その黄金(小麦)色の髪を彩る聖夜色(緑と赤)の組紐が、そこはかとなく和の趣を残す。
そんな彼女は日々を気ままに楽しむという心の下に、彼女は聳え立つモミの木と、その天辺に輝く一つ星、枝葉を彩る飾りに目を輝かせていると。
聖夜を象徴する木より一つ落ちた、ベルの飾りが靴に当たればそれをそっと拾い上げ。
流れる風の冷たさに僅かに身を引き締めながらも、無邪気にベルを手に、どこか自分の髪と瞳に似た色の趣に微笑む。
いつの日かこの冬も過ぎ、芽吹きの春が来るだろう。
一年の四季の巡りに、人は五穀を育みつつ実らせ、豊かな恵みに命を巡らせていくのかもしれない。
だが今は、降り注ぐ雪の美しさに心を踊らせイナリは笑い、一つ手に取ったベルを軽く揺らし。
――チリン。
「あ、いい音ね」
ベルをまた木に括りつければ、少々に早きかもしれない、常世の煩悩を祓う鐘というには小さくそして涼しい響きが聖夜の雑踏を過ぎ去っていくのだった。
*SS担当者:表川プワゾンNM