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勉強会
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木の香りに混ざる本の匂い。
部屋中に敷き詰められた本棚は固い背表紙の本で埋め尽くされていた。
椅子に腰掛けたシラスは何やら悩んでいる様子だ。
「ダメだ、全然分かんない……はじめから読み直そうかな」
貴重な書物が収められた図書館でシラスは溜息を吐く。
育ちの悪いシラスにとって小難しい本は脳から湯気が出てきそうなのだ。
でも、フィッツバルディ派の貴族と肩を並べるために努力している。
「うーん。なあ、聞いて良い?」
「どうしました?」
シラスは机の向こうで本を読んでいるドラマに話しかけた。
彼女もまたフィッツバルディ派の同僚。
仕事の余暇を使って叡智の捕食をしている最中にシラスは同席したというわけだ。
「この部分なんだけどさ、こことここで矛盾してるように感じるんだよ」
ドラマの前に本を広げ、理解が及ばない部分を指差すシラス。
「成程。えぇと、此処はですね……」
若くして成り上がろうとしているシラスに、ドラマは少なからず『期待』している。
十年後か、早ければ数年後には、立派な立場になっているかもしれない。
そんな彼の助けになるのなら、目の前の大好物を味わうのを少しばかり遅らせても良いと思う程度には。
*SS担当者:桜田ポーチュラカGM